日本でも版画教室に通い、すでに個展なども開かれているMさん。
フィレンツェの版画学校 「イルビゾンテ」の3ヶ月間の留学を終え、日本からインタビューにお答えいただきました。
留学を振り返って


留学時期を振り返っていかがでしたか?

日本に戻ってきてからあっという間に2ヶ月が経ちましたが、留学期間の3ヶ月は一年くらいに感じましたね。
今思えば、40歳を超えてからの留学だったのですが、自分でもよく行ったな、といった感想です。
最初の2週間くらいは本当に厳しかったですね。
3ヶ月で6kgも痩せたんですよ。
日本に戻ってもう半分戻りましたが。

留学中に自転車で通学していたのがきいたのでしょうか?

アパートと学校が自転車で20分近くかかるところに住んでいて、イタリアで使っていた自転車が日本のよりも重かったので、筋肉がついたのだと思います。
日本に戻ってきてからは自転車でラクラク坂を登れるのに驚きます。
最初の2週間のまさかのハプニング

留学してすぐに購入した中古自転車が盗まれるというエピソードがありましたよね。

はい。
そもそも貸してもらえるはずだった自転車の持ち主も直前に盗難にあってしまい、急遽中古屋さんで90ユーロで購入したのですが、なんと1週間で、盗まれてしまいました。
国立図書館の前にチェーンをして止めていたのですが、戻ってきたら無くなっていて。
今思えば、あの場所は車の出入りが多かったので、盗みやすかったのだと思います。
留学はじめのいきなりの出来事で本当に大変でした。
一日の流れ


バスですと乗り継ぎが大変でしたからね。
一日の生活はどんな感じでしたか?

学校が13時に終わり、いろいろ寄り道などをしてアパートに戻るのが15時~16時になるので、それからしっかりとお昼を食べると夜ご飯はあまりお腹が空かず、ヨールグルトなどの軽いものしか食べなかったのも痩せた原因だと思います。
3ヶ月間という期間なので、お米を購入して生活環境を整えようとも思わず、毎日、パン、パン、パンといった生活でした。
痩せたい人はフィレンツェに留学して少し遠いアパートに滞在するといいですね。(笑)
後半、作品作りが終わらない時は午後も工房に残ることもありました。
学校初日の感想

学校はどうでしたか?

学校初日にとっても驚いたことは、
先生が若かったことや、クラスメイトもスタッフも美男美女ばかりで、
学校もおしゃれで
まるで映画のワンシーンに迷い込んだような感じでテンションがあがる環境でした。
工房には常に二人の先生と二人のアシスタントがいます。
事務には他に三人ベテランの先生がいます。
先生の数が多いのでフォロー体制は整っている方だと思います。
学校の先生も、何度同じことを質問しても、嫌な顔をせずにちゃんと笑顔で答えてくれました。
質問すれば、後から個人授業になったとしてもしっかり教えてくれるので、
授業中「?」と思った時は、どんどん聞いていくようにしていました。
日本の工房は銅版でイタリアでは亜鉛版でしたので、腐食液の濃度が違い、薄めなくてはならないため、イタリアで作った作品を日本で描き足すなどして完成させることはできませんでした。

留学してよかったと思うことは?

版画の作品をたくさん見れたことです。
日本ではありえないほどの数の作品をみることができ、目がすごく肥えました。
学校にある貯蔵作品がとにかく多く、
さらに月に一度は先生たちも一緒に、課外活動で外の展示会に行ったり、写生会をしたりします。
近くの教会や、電車で一時間半かけてピサの斜塔の近くの展示会にも行きました。
フィレンツェを堪能しつつ、版画を学ぶといった感じです。
クリスマスマーケットの出展作品

作品はいくつくらい作りましたか?

12月は学校の大イベント、クリスマスマーケットがあり、
その日に向けての作品の準備、飾り付けなどで大忙しでした。
一般の人も入場できるマーケットで、生徒&先生の作品を販売します。
私も3点作品を出すことができました。
もっとたくさん出品する生徒さんもいました。

クラスメイトはどんな人たちでしたか?

イタリア人、ロシア人、アメリカ人、オランダ人、南米、キプロス島、など世界じゅうから集まっていました。
私はアメリカ留学の経験があるのですが、それと比べると全然違いましたね。
みなとてもフレンドリーで愛に溢れていました。
クラスでは唯一のアジア人だったので、すごくみんなに助けてもらいました。
なんていうか、見返りを求めずに、無償でいろいろしてくれる人ばかりでした。
お願いしなくても先回りして助けてくれるのです。
クラスメイトとの会話の中で、朝ごはん食べ忘れた、みたいことを言ったあと、
私の分の食べ物も買ってきてくれたりするんです。
そしてお金を渡そうとしても受け取らない、みたいなことが日常的にありました。
カルチャーショック? 人として学ぶことが多かった。

プレス機を待つ時とか、
プレス機の前で話し込むようなことがあっても、私はつい
「どいてほしいな~」
と軽く圧かけたりするのですが(笑)
みんな一切そういうこともなく、
「使っているなら他のことをしよう」
とうまく時間を使うんですよ。
日本だと ゆずりあうこととか、輪を乱さないことが大切ですが、
みんなそういう感覚自体が存在しなてなくて
あなたしだい、あなたが好きなようにして
とみんなが思っている感じで、全体がうまくいくんです。
これは私にとって衝撃的なカルチャーショックでしたね。
共同作業の場や、一緒に出掛けていたりしても、個人がそれぞれ自分の思うように動いていて、それに対してコメントする人もいなければイライラする人もいない、もちろん批判する人もいないというのが、とても新鮮でした。
日本人ってせっかちで、損はしたくないといった感情があり、留学期間の三ヶ月間ずっと、細かいことを気にする自分が小さく感じるようなことがよくありました。
根本的に「人を許す気持ち」とか、そういうのが違うのでしょうかね。
私よりもずっと若いクラスメイトに、人として教えられることも多かったです。
そういう考えかたがあるんだ、そういう行動にでるんだ
みたいな。
そういう小さいことが重なって、最終的に、すごいな、、、って思いましたね。

フィレンツェはどうでしたか?

フィレンツェには愛が満ちているな、っと感じることが多かったですね。
もしかして、たまたま一緒だったメンバーがそうだったのかもしれないけれど。
アパートの大家さんも、無償で空港まで送ってくれたり、荷物の発送を手伝ってくれたり、
日本に戻ってくるまで心配してくれたり。
孤独を感じることはなかったですね。
蚤の市のおじいちゃんも一度買ったら、次回は覚えていてくれて、安くしてくれたり、人情を感じました。
午後も工房に残ったりしたこともあったのですが、そうすると誰かがお菓子をくれたりするんですよ。お昼食べる時間ないでしょ、って言って。

FWNを通じての留学はいかがでしたか?

個人でやっているという点が、いろいろと聞くことができてよかったです。
また、現地イタリアにいるという点も心強かったです。

ありがとうございました。
Mさんの作品はマーケットにくる人々にも人気で、たくさん売れていましたね!私も犬の作品がツボにハマり購入させていただきました。
イタリアで感じたことがこれからの作品にどのように反映されるのかが楽しみです!
MさんのNoteに詳しく書かれていますので、こちらもご覧ください。
Mさんのインスタはこちら 版画の作品やその他の作品を購入することも可能です。
また日本での個展のご案内などもあります。
アンティークマーケット
Mさんも留学中に行った、マーケット。私もご一緒させていただきました。
1:アレッツォの月1回の市場-->市場の公式サイト
ヨーロッパ一大きなアンティークマーケットということでも有名な市場です。
フィレンツェから電車で1時間ほど南にいった、アレッツォという街で月に一回だけ月頭の週末行われます。旧市街の中の広場や通りすべてがマーケットになっています。
かなり貴重なものもあるのでしょうが、お値段も高めな設定になっています。
2:フィレンツェの隔週で週末、独立広場で行われる、アンティーク市場
ここはかなりお得な掘り出しものがあります。
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